特許出願にまつわる情報をまとめているページです。元特許庁OBが在籍し、中小やスタートアップ企業の国内特許取得を全力でサポートする坂本国際特許商標事務所の所長を務める弁理士の坂本智弘氏にご解説いただいております。
坂本国際特許商標事務所は、弁理士会の元副会長で日本知財学会理事の坂本智弘氏が所長を務めています。坂本国際特許商標事務所には、坂本氏以外にも経験豊富な弁理士が揃っていて、特許庁の元審査官や元東京税関の調査官が在籍。特許異議申し立ての内部事情にも精通しています。
特許異議申し立ての成功確率を上げるには、特許庁の審査と弁理士業界を深く理解していることが必要ですが、登録特許の範囲などの複雑な問題を解決できる弁理士は多くありません。坂本国際特許商標事務所は特許異議申し立ても得意としている事務所です。
企業の特許登録が完了したとき、不利益を受ける者が存在する場合は、どのような救済制度があるのでしょうか? 他社の特許登録が自社の権利を侵害している場合は、2つの方法で特許の取り消しを主張することができます。1つ目が「特許無効審判」で、2つ目が「特許異議申し立て」です。
ここでは、この特許の取り消しを特許庁に主張するための手続き「特許無効審判」と「特許異議申し立て」について理解を深めていきます。
特許無効審判とは、登録された特許が新規性や進歩性などの要件を満たしておらず、特許登録そのものの無効を特許庁に求める制度です。この特許無効審判は、利害関係人であれば請求期間の定めはありません。特許無効審判で特許が要件を満たしていないと認められれば、遡って特許が消滅します。
実務の場面では、特許権を侵害していると特許権者から訴えられた場合の対抗策として利用されます。
特許法では、特許公報が発行されてから6カ月以内であれば、特許庁に対して、誰でも特許異議の申し立てをすることができるとしています。期限が定められていることと主張者が限定されていないことがこの制度の特徴です。ただし、匿名で異議申し立てをすることはできません。
特許異議の申し立ての理由とその証拠を表示し、特許異議申立書を提出して行います。異議申し立ての審判の公平性を担保するため、審判官の合議体で申し立て理由と証拠の妥当性があるかを判断します。
特許異議申し立ての手続きは、まず特許異議申立書を特許庁に提出します。特許庁の審判官の合議体で審理し、特許を取り消すべきと判断した場合は取消理由を特許権者に通知、相当の期間を指定して意見書の提出と訂正の機会を設けます。最後に、特許権者が訂正、提出した意見書を審理して取消決定の是非を判断します。
なお、この取消決定に対して特許権者は知的財産高等裁判所に不服申し立てを行うことが可能です。
特許異議申し立て件数は、2015年4月から2020年12月末までの特許庁の発表では、6,000件を超えています。この異議申し立てでは、登録された特許が訂正されずにそのまま維持されたものが1,925件(36.2%)です。また、訂正を経て維持されたものが2,694件(50.7%)です。一部または全部が取り消されたものは614件(11.6%)で、異議申し立てそのものが却下されたものが、66件(1.3%)です。
異議申し立ての結果を見ると、登録された特許に何らかの訂正が入る場合は多いですが、一部または全部の取り消しまでに至ったものは多くありません。
特許異議申し立てが成功する確率は、全体で10%程度です。特許登録の審査は厳密にされているため、なかなかその決定がくつがえることはありません。しかし、登録特許の権利範囲を縮小させることは多くあるため、特許異議の申し立てを行うことに意義はあります。
特許登録の範囲が縮小された場合、異議申立者も特許請求の範囲を変更することで特許登録ができる可能性が生じます。このように、特許異議申し立ては、特許登録そのものの取り消しは認められなくても、権利範囲を縮小させることに意義があるといえるでしょう。